Chers mes amis
ある日のコピーライターの師匠との会話の一コマ。
「韓信(かんしん)って知ってるか?」
「え?あの中国史の、えっと、確か項羽と劉邦の時代のあの大軍師韓信ですか?」
韓信が誰か、という質問に即座に答えられたことに満足する。
「そう、その韓信。でも今から”大軍師韓信”ではなく、”股くぐりの韓信”として覚えろ」
「それなら僕も知っています。まだ大軍師ではない若い頃、仲間や町の人達にバカにされて他人の股をくぐらされてたって話ですよね?笑」
「そう、その逸話。その話の本当の凄さをお前は理解してるか?」
「え?・・・まぁなんとなく・・・」
「いや、お前はまだ韓信の股くぐりの本当の凄さをわかっていない!」
「・・・」
そう師匠に言われたのはつい最近のこと。
韓信という人物がわからない人もいると思うから少し紹介するね。
昔々、中国で項羽と劉邦という二代勢力が覇権を争っていた時代。
のちに漢国を興した劉邦の元で、天才軍師として活躍した人物こそが今回の主人公の韓信。
そんな大功績を残した人物なんだけど、若い頃はその片鱗など全くなかったらしい。
ある日、韓信は街のチンピラにケンカを売られる。
「お前の腰にさしている刀は飾りか?
それが飾りじゃないっていうんなら、俺を斬ってみろ。
それができないなら俺の股の下をくぐれ、この腰抜けが!」
ひどい罵倒を受けたが、韓信は迷わず股の下をくぐった。
こんな辱めを受けたら真っ先に飛びかかって斬りかかりそうな状況だけど、
韓信はそれをしなかった。
実は、それには理由があった。
韓信には、将来成し遂げるべき大きな志があったからだ。
いま、目の前のチンピラを斬ってしまったら、その志はすべて台無しになってしまうと思った。
なぜなら、いつかその斬った男の家族、友人、取り巻きが命がけで自分を復讐しに来るだろう。
そうなれば、志半ばで死ぬことになる。なんとつまらないことだろうか。
であるならば、股をくぐることぐらい何てことはない。
こうした理由で韓信は自分の志のために股の下をくぐるという屈辱を受けることを、躊躇することなく選んだのである。
それが故事成語「韓信の股くぐり」(将来に大志を抱く者は、屈辱にもよく耐える)の由来。
お前、なめてんのか?
ついつい大人気ないと、わかりつつも言ってしまった・・・_| ̄|O
自分を弁護するわけではないけど、予め言っとくと今回の件は相手の不手際みたいなのが重なって俺が爆発しちゃったってパターンね。苦笑
事のあらましはこう。
最近、取引のあるクライアントの経理担当者と少しいざこざがあってね。
俺は一人でライターやってるから、当然仕事の営業もライティングも経理も全て一人でやらなければいけない。
だから請求書の発行が遅れたり、担当者とのやり取りがスムーズじゃなかったり、経理の管理がまずいと翌月お金が入金されないみたいな最悪なことなってしまうのよ。
これは俺だけに限らず一人起業家として活動してる人ならお金の管理にはかなりシビアだと思う。
請求書の件で問い合わせても何も音沙汰がない・・
入金は翌月末ではなく、翌々月末にすると一方的にアナウンスされる・・
成果報酬歩合のパーセンテージが契約と違っている・・
月末に入金されるはずの入金がない・・
この辺でホトケのよしのりの怒りが爆発したわけ。笑
電話口で、、、
「おい!お前よお?俺が個人でやってるからってなめてんのか?一体何なんだ・・・
ギャーギャーギャーギャーギャー・・・」
そりゃもう、「正論」を言いたい放題、言いまくりましたよ。
実はこの一件がそもそものコトの発端なのよ、今回のテーマは。
Do things right vs Do the right things
経営の父と呼ばれるピーター・ドラッカーは、
「人々が成果を上げられる存在になるためにはどうすればよいのか?」 という質問に対してこう答えた。
「物事を正しく行うこと(Do things right)と正しい物事を行うこと(Do the right things)の両方をどうやって実践するのかということを追求すれば良い」
この微妙な意味の違いを理解するのは少し難しいから、
ここで一つの例を。
我らが松蔭高校サッカー部にはこんな暗黙のルールがあった。
「1年生の集合時間は、1時間半前に集合場所に行かなければいけない」
今考えれば(当時も思ってたけど、、)意味がわからない。なんで1年だけ1時間半前に集合しなければいけないのか。そんな前に集合して何かすることがあるのか。
もちろん意味なんてないし、することも無い。いわゆる「体育会系」と呼ばれる伝統的な慣習というやつ。
でも、もし俺だけ「うるせーバカやろー」とか言って、一人だけ従わなかったら周りからは裏切り者呼ばわりされることになる。とてもじゃないけど、サッカー部には居場所はなくなるだろう。試合に出てもパスは回ってこないし、おそらく先輩からも嫌がらせを受けることになるだろう。
当時の俺の目標は何だったか?
「国立に行くこと」「レギュラーとして試合に出ること」「チーム一丸となって試合に勝つこと」
この目標を果たすための、「正しい行動」は果たしてどちらだろうか。
この例で言えば、
1時間半前に集合することが、Do things right。
1時間半前に集合なんて全く意味無いしと、正論を言って10分前に集合するのが、Do the right things。
ここで言いたいのは、どっちが良いとか悪いとかじゃないってことね。
俺は個人的にどっちも大事だし、必要なことだと思う。
韓信で言うところの「大志」、高校サッカー部時代の俺で言うところの「国立へ行くっていう目標」を叶えるためにどちらの行動が取るほうがよりその夢に近づくことができるか。
それを考えるのが一番大事なこと。
味方をたくさん作るのではない。敵を作らないことだ。
「お前はまだ韓信の股くぐりの本当の凄さをわかっていない!」
「・・・」
「いいか、これだけは覚えておけよ。
ビジネス活動をしていく上で多くの人が勘違いをしている。それは、味方や仲間をたくさん増やしていくことが一番大切なことだと思っている。
でも実はそうじゃない。
いかに敵を作らないか、が一番大切なことだよ。
確かに、仲間や味方が多いに越したことはない。たくさんいればそれだけビジネスのチャンスは増えるだろう。
でも、一度敵を作ると、その敵はその後どういう行動をとるようになるかわかるか?
その敵は、一生をかけてのむらの足を引っ張ろうとしてくるぞ。それは将来どういう結果をもたらすか簡単に想像できるだろ?」
いや〜ドキッとしたね。苦笑
生唾をのみ込んだゴクリという音が自分でも聞こえたからね。笑
今回のクライアントとの俺のやり取りを聞いての師匠からの言葉。
怒りに任せて正論ばっかり述べて、相手の非を100%認めさせて、グウの音も出ないぐらいコテンパンに言いくるめてしまった。確かに言ってる時、俺はめちゃくちゃ気持ちが良かったし、モヤモヤが晴れてかなりスッキリした。
でも、相手は納得するかもしれないけど、たぶん俺には良い印象を持っていないだろう。事実、相手をかなり落ち込ませてしまった・・
そして、結果「敵」を作ってしまった・・
だから、師匠に続けてこう言われたよね。
「のむらは正しいことを言った。でも、もっと違う言い方があっただろ」と。
まだまだ自分の考えが浅いというのか、器が小さいというのかね。
そう思った途端、この韓信の凄さがじわじわ出てきたよ。
韓信だったらどう対処しただろうか?
それにしてもありがたいよ、まだペーペーの俺にこういうすごく大事な教訓を教えてくれるのは。
一人でやってたら、たぶんこういう大事な教訓を学ぶのって何十年後だったかもしれないし、もしかしたら一生わからずそのまま死んでくことになったかもしれない。
自分の敵だらけになってる世の中。そう考えるだけで、ゾッとするわ。苦笑
そうそう、ちなみに、
この教訓って、ビジネスだけに使えるってわけじゃないよ。
仲の良い友人同士でも家族でも「人が介する活動」なら何でも適用できるよね。
まとめ。
「この活動において、わたしにとって達成したい目標、目的とは一体何だろうか?」
「それを達成するためには、どのような人間関係を築くことが賢明な選択だと言えるだろうか?」
補足。
この教訓は、誰に対しても八方美人に振る舞えと言ってるのではないからね。
あくまでも目的を達成するための最善策は何か?ということだよ。
たぶん、俺は今回のような同じ過ちをあと2、3回は繰り返すような気がしてならない。。。
もちろん、なるべく避けようと努力はするけどね。
あなたも無意識レベルでこの問いが頭の中に思い浮かぶぐらい繰り返し唱えまくってみて。(^ ^)そしたら、問題は最小限に抑えられるかもね。
言うは易く、行うは難し。
死ぬまで努力していくべ!
PS.
その後、このクライアントさんとどうなたかって?
大丈夫上手くやってるから。こちらから謝ってはいないけど、
俺に「韓信の股くぐりマインド」がインストールされたからね。
結局、相手を変えようとするより、自分を変えたほうが早いよ。